♪ブーゲンビリア第46号(通巻113号)2008年10月号より

 今年も本格的な秋の到来の時期となりました。いつものように雑務に追われて暮らし、四季のめぐりに気づかずいるうちにもう秋…。時のたつ早さにただ只、愕然とする毎日です。 そういえば母がその昔、口癖のように「40を越えた女の時間は坂を転がるごとし、時間は待ってはくれない。一日一日を丁寧に生きよ。何時までもあると思うな親と金…、と昔から言われているのよ。えいこ、親の小言となすびの花は千にひとつも狂いはないというでしょ」…針仕事の手を休めながらつぶやいていた光景が懐かしく思い出されます。そんな夜の母は、きまって極楽トンボの私の行く末を案じてか、台所に貼ってあるような人生訓を手なれた口調で語りはじめるのでした。「アリとキリギリス」の話のキリギリスのような私には、そんなお線香臭い人生訓より、やがて降り注がれるであろう明るい未来の私自身の姿や夢や空想に夢中で、母の語る忠告も教訓も耳に届くことはありませんでした。

 そんな秋の夜長から何十年も立ちました。いつのまにか、人生の秋を迎え、母の想いをしみじみと懐かしく受け取っています。計算方法によって違いがありますが、自身の人生の時間を計算すると、私は今、晩餐の時を迎えていることになります。それを実りの秋と捕らえるか、晩餐が終わったらもう楽しみが無いのではないかと捕らえるかで、これからの時間の過ごし方が違ってきます。いたわりの気持ちやこころのあり様が、人生の豊穣の時をさらなる味わい深い、価値あるものにするのかもしれません。

 人恋しい秋やちょっとへこんでしまった時、元気のでる「おまじない」の言葉があります。「今日もきっといいことがある!!」そう、「今日もきっといいことがある!!」 何度も声に出して唱えてみると不思議な内なる力が溢れ出てきます。 「葉隠れ」の一節にあるこの言葉に、時には武士たちもやる気を奮い立たせ、武士道をつらぬいていたのでしょうか。この言葉には「自身でよい一日にしようとする強い意志や言霊」が秘められていて、日々無事に生きることの大変さや大事さが胸に突き刺さります。「今日もきっといいことがある!!」と、目をつぶって念じてみると明るい朗らかな気分になり、人生捨てたものではない、さあ、頑張って一日を生き切ろうと勇気が出てきます。

 人間単純なもので、誰でもいいことがあれ、明るくなります。明るい心を持てば、いいことをたくさん見つけられます。毎日を明るく過ごせば人も物も自然と集まり、さまざまな出会いが生じます。出会いが人生を活性化させ、心が躍動し、よどまず循環して、運命が好転していくのではないかと感じます。 「今日もきっといいことがある!!」と口角をあげて唱えても元気がでないときは、自分の行動パターンを見直してみるのも一案ではないでしょうか。ストレスや不安の対処法はひとそれぞれ自分にあった方法を見出すのが一番ですが、 「心を元気にする11の対処法」が古いノートに書き込みをしてあったのでご紹介いたします。。

< 心を元気にする11の対処法 >  
①解消する:日常の些細なストレスは、ちょっとした気分転換で解消するのが一番。(カラオケ・食事・飲酒・散歩・ウインドショッピング・おしゃべり)
②戦う:悩みの原因がわからないことで、もやもやした気持ちを拭いきれずにいるならば思い切ってしっかり問題と向き合い、行動に起こすことではっきり決着をつける。
③慣れる:どうしても避けられないことなら、解決しようとするのではなく耐性をつけることで慣れることも有効的。「また言ってる」と遣り過す。
④忘れる:1つのことに囚われていると、心が解放されず、悩みは深くなるばかり。そんな時、思い切って行動を変え、一時忘れる。距離をおき、新しい展開が開けるのを待つ。
⑤避ける:たいして重要でないことなら、向き合わずに逃げられることも案外ある。気の進まない誘いなどは、思い切って断ってしまい事前にストレスを回避する。
⑥砕いて飲み込む:一度に解決できない大きな問題なら、少しずつ自力でやることからはじめて、気長に頑張ってみる。少しずつでも行動に起こすことで、いつかは無くなる。
⑦取り込む:発想を変えることで、これまでのストレスに感じていたことがストレスでなくなる。
⑧据え置く:大きな問題や複雑な問題ほど、解決をあせってパニックになりやすいもの。そんな時は「風とともにさりぬ」のスカーレットの有名な言葉「明日があるさ」のように、冷却期間を置くのが一番。
⑨合理化する:つらいことでも理由を見つけられればストレスを感じないで済む。イソップ物語の狐が、欲しくてもとれなかったぶどうを「あれはすっぱいんだ」と考えることで自分を納得させたのと同じやりかた。
⑩開き直る:周囲の評価や世間の尺度で自分をみるのではなく、自分の価値観をしっかり持ち、ありのままの自分を大切に生きていれば、ストレスを感じることは少ない。
⑪浸る:避けられない哀しみに出合った時は、現実から目を背けてもどうにもならない。そんな時は思いきりその感情の中に身をおくことで、気分がはれることもある。

 黄昏てきた人生絵巻の残りの少なさに、心細くこれでいいのだろうかと、時として不安がよぎりますが、今、生かされている時間を大事にしたいと思います。人生の収穫期、美酒にあふれた豊穣の秋を迎えるようと、日々積み重ねた時間の重さを肌で感じます。四季のめぐりも人間も大自然の一部だと実感します。
 仏教では、「山川草木悉有仏(さんせんそうもくしつうぶっしょう)」自然のすべてに、「いのち」があり、生命の輝きがあるという教えがあるそうですが、今、生かされていることに感謝しながら実りの秋を迎えていきたいと思います。 紅葉狩り、ぶどう狩り、梨もぎ、栗拾い、いわし雲、夕焼け、コスモス、ハイキング、散歩、金木犀、秋の七草、展覧会、菊人形、ハローウィンやサンクスギビング、読書の秋、芸術の秋、スポーツの秋、食欲の秋等、楽しいことが一杯…。自然とふれあい、いたわりあいながら秋の時間にそまりましょう。紅葉のように真っ赤に、真っ赤に、いのちの輝きをゆっくりと燃やしていきましょう。