絵子の縁側便り 6月号

2024年6月
内田 絵子

 

 色とりどりの立葵の花が咲き始めるのは梅雨入り前、茎の下から上へと次々に咲きのぼっていき先端まで咲き終わったころ梅雨が終わるので「梅雨葵」の別名を持っているとか。梅雨と言えば待ちわびていた雨を受けとめるようにあでやかに咲く紫陽の花の方が梅雨空に映えるように感じるのですがいかがでしょうか。日本でも近年はしっとりとした梅雨のイメージはなく地球温暖化に伴い、大雨や局地的豪雨が増加する傾向にあるようで、河川の増水、家屋への浸水、土砂災害などの警戒、災害対策等が必要不可欠となりましたね。
 かつて滞在していたシンガポールは熱帯気候ですので、夏は雨季の始まりで降水量が増える傾向にあり、日常的に突然豪雨がドカ~ンと降るスコールを体験しました。暑いですから車を利用することが多いですが、傘を持って歩いていてもびしょ濡れ状態になるのですが、30分もすれば晴れ間がみえるので、出先でスコールに出会っても皆さん慣れたもので夫々にうまくやり過ごしていました。私もスコールの気配を感じるとハイティーやアフターヌーンティーを楽しんでいる女性たちに混じってスコールが上がるのを待つことも日常のウキウキした楽しい一コマの光景のように感じていました。

 一方で水の恵みをもたらす雨は全生物に生命を与えてくれます。日本各地の故郷の山河に降り注いだ雨は一滴の尊い水となって私たちを潤してくれます。日本はなんと水に恵まれた美しい国でしょうか、世界に誇れるものの一つですね。そして先人たちは私たちに水を大切にする水文化を育ててくれました。
 とうとうと湧く透明な水、清い水は雑味がなく水本来の味がするのでしょう。そんな水のおいしさに久しぶりに出会ったのはコロナ禍前夫と新潟の温泉を巡った時でした。美味しい清らかな水に出会い、体の隅々に尊い水がしみわたり、水のおいしさを再確認し、思う存分堪能することができ感動しましたが、傍らの夫は滞在中「雪中人参ジュースと日本酒三昧」で、水を口にすることはありませんでしたが、この一滴の清らかな美しい水は、雨と雪を受けとめゆっくりと地面に浸透させ、枯れることのない清き水を数年かけて地中を通り、川となり里に下り、田畑を潤し、稲を育て良いお米やお酒をつくってくれるのですから夫も十分に豊かな水の恵みを堪能したことになるのでしょう。

 老後は・・・水の美味しい魚沼にゆっくり旅するのも移住するのもありかなと想像が広がっていきます。いつだか見た写真付解説によると大山もいい感じにおもえてきました。美しい光景、豊かなブナ林が現代にも残り、水の恵みの地蔵菩薩があり美水の郷には4つの名泉があるという神話時代から大いなる神の住むという鳥取県の標高1729メートルの大山の写真・・・・。美しい水のある美しい景観に惹かれ、大いなる神の住む大山の地にあこがれが広がります。麓では至るところで水が湧き出て、人々の暮らしを潤しているとか。郷愁を誘う日本の美しい原風景に心ときめかせたこともありましたが・・・・・・現実は年齢と共に健康に陰りを持つ高齢者と呼ばれる日常生活です。日本の美しい原風景の広がりや美しい地方への旅の思い出や刺激的な海外生活、海外旅行への旅の思い出の数々を語り合ったり、移住生活に夢を馳せることは時間を超えて、空間を超えた楽しみの一つとなっています。

 今後は、益々健康に不安を持つ日々が続き診察券が手放せない日常生活となっても・・ 現在進行形の人生を手放さない思いをもつことは、今日を生きることに繋がるのではないかと思うのですが、みなさんはどのように感じますでしょうか。
 お陰様で来年は夫との二人三脚の暮らしも金婚式を迎えることができそうです。

そして、時には雨の恵みにしんみりと心を落ちつかせ、潤い豊かな情が湧いてくるのを感じながら・・・・「雨の日は雨を聞きつつ、風の日は風を聞きつつ喜んで生きる」の実践を楽しみつつ穏やかに暮らしていけたらと念じています。
 皆様にとっても豊かな梅雨の思い出ができますことを念じています。

写真:副理事長玉井公子父 ・玉井 八平