絵子の縁側便り 8月号

2023年8月
津根 静香

 暑中お見舞い申し上げます。今年は、猛暑だけではなく、線状降水帯の発生により河川の氾濫や土砂崩れが起こり、水害が多く発生しています。知り合いの方々が住んでいる地域に発生のニュースがあると心配になってしまいます。

 この8月、乳がんの手術をして10年目となります。10年一昔と言いますが、東日本大震災からの復興、コロナ感染症の生活、ウクライナ戦争の勃発など、世界的にも大きな変化がありました。勿論、がん治療にも医学的な大きな進歩があるのは当然のことですが、日本の女性の生涯においての乳がんに罹患する割合が、12人に1人であった時代から9人に1人となっています。

 ブーゲンビリアでは毎年8月に「偲ぶ会」を行ってきました。病院中心の患者会では、集まって仲間を偲ぶことは難しいと思います。しかし、どんな悲しい現実でも受け止め、治療中の仲間同士で気持ちを思い出や人柄を言葉にしていくことは、治療のひとつだと思っており、何より治療しながら暮らして行く方々の心の拠り所になっていると信じています。寛解状態で、病院や患者会で会わなくなることは幸いですが、亡くなった人のことを知らないふりや語らなくなるのは、現実から目を背いているように感じ、私は「偲ぶ会」を大切に思っています。

 今年に入り、身近な知り合いが3人亡くなりました。私と年令が近いこともあって、心苦しく、寂しく…何とも言えない気持ちです。成人間近な子どもを育てていた人、孫の誕生を楽しみにしていた人、そして両親を置いて先立った人、今の時代、皆さん仕事をされており、さまざまな人生のステージに立つ女性でした。そして、残されたパートナーの心中はいかばかりか…。

 この10年で、高齢者の「終活」がブームとなりました。医療的には事前指示書やACPという考えの認知度も上がってきていますが、がん患者は年令に問わず、告知されると「終活」を意識せざるを得ないのです。

 お盆は先祖供養の儀式で、先祖の霊があの世から現世に帰ってきて、家族と共にひとときを過ごし、再びあの世に帰って行くという日本古来の祖霊信仰と仏教が結びついてできた行事。

 20年前、母の乳がんは2年目に再発し5年生存できませんでした。父は母の死のショックもあってか認知症となりコロナが流行する冬に亡くなりました。両親の墓参りに行くと、父と通っていた鰻屋さんに行き、「うな重」を食べるのが、私の恒例のお盆行事の一コマになっています。

 お盆明け、高校時代の友人2人が上京し会いに来るという嬉しい連絡が春先にありました。彼女達は、私が闘病生活をしている時期に会いに来てくれた友人です。長い付き合いに感謝し、再会を楽しみにしているところです。

 先に旅立った人のことを忘れないように、思い出を語り合うことは、生きている私の心の中を浄化し、気持ち新たに暮らしていくことを誓う時間でもあると思っています。8月は、偲ぶ会と手術した月と相まって、感慨深い月です。

 しばらく暑い日が続くと思いますが、夏バテしないように、気をつけてお過ごし下さい。

Photo by 玉井八平氏(玉井公子副理事長父)