♪ブーゲンビリア第85号(通巻152号)2012年1月号より

 新年あけましておめでとうございます。旧年中は大変お世話になりありがとうございました。今年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。

 元旦の朝はいつもと空気からして違い、凛として清々しく晴ればれとした気持になります。年賀の挨拶、初詣、祝いの膳、そして新たな気分で一年の計を立てます。皆様には、おだやかなお正月をお過ごしになられていることと思います。
 平凡でいいから健康で家族みんなが元気で無事に一年が過ごせますように!!

「病気になって初めて知る健康のありがたさ!! 普通の暮らしが続くことの尊さ」の今年ほど大安心を願う初詣の光景を感じる年はありません。。

 昨年も全国からたくさんの患者さんの声がブーゲンビリアに寄せられました。本当は、日々病気や家族の問題や色々なものを抱えていることだと思いますが・・。新年だからといってそれが解決するわけではないですが、時にはそんな色々な思いや心配ごとをちょっと脇において、一年のスタートという厳かな晴れがましい時のめぐりの重みと思いを深め、せめてもお正月気分を味わって元気を出して頂きたいと願っています。がんや病気になっても安心して前向きに治療が出来、安心して暮らせ、日本に生まれて良かったと思える国になってほしいと心から念じずにはいられません。

 ・新薬で長く生きることが出来ありがたいが、高価な薬の支払いに本当に困っている。

 ・治療費がかかるから仕事は休めないし、体はきついし、孤独感に押しつぶされそう。

 ・がんは死と向き合う病気なのでちょっとした不調に敏感になりとても不安に思うが、温かく愚痴を包んでくれる場所や気軽に相談に乗ってもらえる場所が無い。

 ・独身で仕事に力を注いできたが、がんになり仕事を失い、実家に逆戻りして暮らしている、これからの仕事や結婚将来のことが不安で希望が持てないまま時間がたつ。

 ・再発したが治療費が高くこのままでは治療を止めるしかないのかと悩んでいる。

等等。

 電話の向うの切実ながん患者さんの声に対峙していると「がんは政治である」の言葉の意味をずっしりと感じます・・・・・どうしたら解決できるのでしょうか。がんや医療の問題解決には難しい問題が山積していますが、遅々と進まないのには「善意の沈黙と無関心」の言葉通り私たち一人ひとりが拍車をかけているのかも知れませんね。これからの日本の医療保障を持続させる上で、今最も難しい課題は高齢者の医療対策「医療と介護の連携」がキーワードといわれて久しいですが・・・。

 平成24年度の社会保障関係予算案が閣議決定されました。がん対策としてがん研究の推進で研究費増額。小児がん対策の推進で拠点病院体制整備10箇所設置。在宅緩和ケア地域連携事業の推進で増額。がん対策としてのワクチン行政の推進で子宮頸がん予防ワクチン等の助成制度は継続されるもようです。

 昨年の3・11の震撼とする大震災や原発事故の出来事に日本が壊れたように感じました。当たり前に存在していた命や健康が失われ、当たり前の日常の暮らしが一瞬で消えてしまう恐怖感や絶望感、家族や町が根こそぎ跡形もなく破壊されていく不条理に・・・・・一体どう処していけばいいのか・・・・・心が凍りつきました。

 でも、こんな未曾有の大震災や人災から立ち上がる第一歩を踏み出したのは・・・。先人たちの体験を無駄にしない普通の人々の暮らしから育まれた「相手を思いやる力」だったのではないでしょうか。その力は「愛情や絆」となって日本の崩壊を食い止めたのではないかと感じます。

「また新しい一日が始まる。今日はもっといい日」とどんなに辛くてもあきらめない東北の人々の粘り強い、相手を思いやる力、人間力の深さを再確認しました。

 東北在住のブーゲンビリア会員さんの君代さん、寿美子さん、百合子さん等皆さんご無事で・・・前向きに頑張っていらっしゃいます。皆さんのそんな生活の折り目の正しさ、素朴な人情や先人たちを大切に敬う生活態度の数々、その生活の並々ならぬ深さや生活の知恵や美しさが、日本を救う力になるのだと思いました。

その根っ子は時間をかけてつぐみ出された毎日の生活習慣の中にあるのでしょうね。

 昔、大震災も乗り越え、清貧の生活の中で、自由で長寿な人生を生きた良寛和尚。曽洞宗の僧侶で歌人、漢詩人、書家でもあって生涯寺を持たず、子どもたちの純粋な心を深く愛した良寛和尚。子どもたちに、せがまれると夕暮れまでも手まりをして遊ぶほのぼの良寛和尚は、天真爛漫で融通無碍な人だったと言われていますが。

たような私たちの暮らし方や生き方を解放してくれる突破口となるのではと、あえて、良寛和尚の一文をご紹介させて頂きます。

 良寛さん70歳の頃、新潟地方は何千人もの死者を出すような大地震に襲われた。ところが良寛さんは嘆きもせず、親類縁者に安否を気遣う見舞い状を出して、さらにこんな一文を添えた。

  『「災難に逢う時節には災難に逢うがよく候。死ぬる時節には死ぬがよく候。これはこれ、災難をのがるる妙法にて候」(中略) でもそれは無責任でも何でもなく、抗わず、受け入れることが最上の方法なのだと説いた。天地の理法をつかんでいたからこそ、そう勧めることができた。』

 生涯身を立つるにものうし  騰籐として天真にまかす
 嚢中三升の米        炉辺一束の薪
 誰か問わん迷悟の跡     何ぞ知らん名利の塵
 夜雨草庵のうち       そう脚等閑に伸ばす
         起居していた国上山五合庵にて 良寛

 えらくなろうなどという世間的なことに気を使うのはものうい、今は天に任せてあるがままである。袋の中には三升の米しかなく、炉辺には一束の薪しか無いが、そんなことには煩わせない。迷いや悟りすらも関係なく、名聞利養など塵のようなものだ。草庵の内にあって、夜、雨がシトシト降る音を聞きながら、誰に気兼ねすることもなく、二つの足を長々とのばしている。

 「その結果火の気のない囲炉裏の側で寒さに震えることになるとしてもそれはそれで受け入れた清貧の生活は、代わりに融通無碍で天真爛漫な生活を約束してくれたのだ。良寛さんは清貧の生活を楽しみ、大自然とひとつになった生活を活写して、読むものを執着から解放ち、自由な世界に誘っていく。(中略)」

 凡人の私には良寛さんのような・・・人生の断捨離はうまく出来ませんがそれでもせっかく生まれてきたのだから、一度しかない人生、同じ生きるなら、「生まれてきて良かったと、心の底から思えるような夢や願いを実現したい!! 明るく朗らかに楽しく生きたい!!」と、欲張りな生き方を求めてしまいます。でも、その代わり、「不都合なことや苦難に思うこと」に出会ってもただただ現象に振り回されずに、時には「苦難は人を成長させてくれるものかもしれない」と、明るく、勇気をもって生きていきたいと思っています。

 お蔭様で、今年はブーゲンビリア設立15周年目の節目の活動年となります。

「いのちのバトン・薬はみんなで作るもの」をテーマに、がんの臨床試験・治験についてアジアのがん患者さんたちと一緒に考えていきたいと思っています。

微力ですが仲間たちと力をあわせ、よりよい一年にしていきたいと思います。

どうぞ、今後ともご指導いただけますよう宜しくお願い申し上げます。

重ねて、今年も 皆様方の変わらぬ温かなご支援、ご協力をお願い申し上げます。

皆様方の一年が、輝かしい素晴らしい年となることを心よりお祈り申し上げます。