絵子の縁側便り 10月号

2025年10月
 津根 静香

 日本は「四季」がなくなり、「二季」になってしまうのかと思ったりしますが、彼岸花が例年どおりに咲いているのを見て、心が緩みました。

 私の布草履との出会いは、東日本大震災で被害を受けた福島県楢葉町の方が作った布草履を購入したことから始まります。友人が復興支援の一環で取り寄せた物で、既製品ではない、いわゆる一点もの。手作り布草履に思いを馳せると同時に、とても履き心地が良かったことを覚えています。何度も洗濯し履きつぶした後、どこで購入すればよいかと探していたところ、あるハンドクラフト展で布草履の材料キットを手に入れましたが、なかなか自分一人で作ることができず、何年か部屋の隅に眠っていました。
 そしてコロナ禍となり、家でできることを何か始めたいと思っていると、市の広報で「布ぞうり研究会」が近くにあることを知り、見学に行ってみると、一般の手芸教室ではなく、できる人がお互いに教え合っていて、研究会の名のとおり、日々作り方の改良を重ねている集まりでした。材料は、綿織物の端を紐状にして売っている工場に行き購入している紐を使って作っていますが、手持ちのTシャツやポロシャツからの紐の作り方も教えてもらいました。そして何回か通っていると布草履の良い点(①~⑤)、布草履作りの良い点(⑥~⑧)がみえてきました。

  1. 足の親指を開き、床を掴んで歩くので身体に良い
  2. お風呂あがりの濡れた足も快適に
  3. フローリングの床の掃除ができる
  4. 汚れたら、洗濯機で洗える
  5. 愛着のある物(Tシャツ)の再利用
  6. 手先を使い、話しながらできるので、認知症予防
  7. 作業は机ひとつあればよく、すぐに場所を移動できる
  8. 隙間時間を使って、こつこつできる

 実はこの集まり、多世代交流という側面もあり、布草履作りに興味をもつのはシニア層、そこにボランティアとして大学生などの若手の協力もあり運営されており、そのまま社会人になっても続けて来てくれる方もいるようです。大学生ボラには「布草履」という言葉にヒットしてか海外の留学生もいて多国籍交流にもなっています。作り方を通して「この色がいいなあ」「鼻緒はこの柄がいいんじゃないかなあ」などのお喋りに始まり、いつしか人生相談になったりすることもあるようです。最初は自分の為に作っていましたが、家族の分も、友人にプレゼントしようという意気になれば、更に楽しみは増し、細く、長く、緩く…関わっていく集まりらしいです。

 最近、紐を購入している工場から、白色の紐を大量に無料で頂きました。白色は布草履の材料としては人気がありません。清潔感はあるが、汚れが目立つからでしょうか。考えた末、その白い紐を「べんがら染め」してみることになりました。「べんがら染め」は地球に優しい染め方で、材料は土で、染めた後の水は普通に流しても大丈夫とのこと。しかもその色は、ウコン色や朱色など、趣のあるどこか懐かしい色ばかりです。染めた後、乾かすのに少し時間を要しますが、そこは染め物、致し方ないでしょう。手間をかけ染めた紐に愛着が湧いてきて、そんなことをしているからか、布草履作りは益々奥深いものになっています。
 今後の集まりの展開は予想できませんが、布草履を通しての人との関わりや広がる世界には好奇心をかき立てられ、おおげさに言わせてもらうと、布草履を日本の文化の一つとして捉え、継承し、何か楽しいことができるといいなあと思っています。
 今年はZ時代の若者に「令和の編み物ブームが到来!」しているらしいです。そのブームが布草履にも広がり、若い感性でシニアと共に「布草履ブーム」を巻き起こして欲しいです。

 秋だと言うのに、まだまだ暑さが残っているので布草履は活躍中、秋の夜長には布草履作りはもってこいです。皆さんは短い秋をどのようにお過ごしですか?

Photo by 玉井八平氏(玉井公子副理事長父)