絵子の縁側便り 9月号

2025年9月
 内田 絵子

 9月になっても厳しい残暑は続きますが、あたりはすっかり秋の気配に満たされてきました。ギラギラと輝く太陽の季節にとって代わるのは秋の夜長ですが、秋の夜長の季節の主役は月ですね。夜空の月も星々も次第に輝きを取り戻し爽やかな秋風がエネルギッシュな夏に少し疲れ気味の私たちの心身を、月の明かりが鎮めてくれるように感じます。

 日本には昔から春夏秋冬を尊ぶ文化があり、9月9日は重陽の節句です。別名「菊の節句」とも呼ばれる五節句の一つですが「長寿を授かりますように」と、無病息災の祈りを込めて菊酒をいただき、食用菊で酢の物やおしたしを作り、食卓に並ぶ菊の巻きずしは、色も美しく、しゃくしゃくとした歯ごたえを楽しみながらの家族で食卓を囲む家族団らんの光景と母親の白い割烹着姿が懐かしい昭和の食卓の風景として目に焼き付いています。
 また、9月の第3月曜日は「敬老の日」です。兵庫県の野間谷村の「としよりの日」が由来で「多年にわたり社会に尽くした老人を」敬愛し、長寿を祝う日として、1996年に「敬老の日」が定められたとか、他国にはない日本独特の祝日ですよね。私たち日本人は、昔から目上の人を敬い、その教えを大切に守ってきたように思います。これまでの私たちを支え、教え導いてくれた・・・・親・先生・先輩の方々、そしてなにより先人の教えの数々に支えられ今を生きているのだと思います。感謝する日々が多くなってきましたね。

 皆様も「光陰矢の如し」を実感しながら日々暮らされているのではないでしょうか。
 私自身も気がつけばいつの間にか後期高齢者の76歳です。今では「敬老の日」のど真ん中に存在しています。思えば、ついこの間、青春のど真ん中を闊歩していたはずなのに誰もが通りすぎたようなピカピカの青春・・・。その中身は少々の学びに、スポーツに、読書に、仕事に、恋愛にと、華やかな青春を経て・・・結婚、親との同居、家族間のトラブル、夫婦で独立、子どもの誕生、子育て、親と同居、子どもの反抗期、親の看取り、シンガポールで乳がん罹患・手術・再建手術、帰国後患者会設立、乳がんのお仲間との出会い、夫の退職、夫の再就職、夫の手術と入院、子どもの結婚、孫の誕生、還暦、身内の看取り、古希、夫の手術と入院・・・と長いような短いような道のりを過ごしてきました。
 お陰様で、今年は無事に金婚式を迎えることができました。ひとえに多くの皆様に見守られ、支えられての感慨深い、結婚生活50年の時間だったように感じています。また改め育ててくれた両親にも夫にも感謝の気持ちで一杯です。

 高齢になってのこれからの私の新しい体験と課題は、何といっても大往生への道ではないでしょうか。大往生した人の生活ぶりと死生観の共通項を吟味してみると・・・大往生のコツがわかるのではないかと、ここ数年アンテナを立てて生きています。

大往生という言葉の意味を知ると何か感慨深い気持になります。
➀「苦しみのない、安らかな死」これは「平穏死」とか「満足死」と同じような気持ちではないかといわれています。
②「立派な死」とは、感動に満ちておりその荘厳さが後世にも伝えられるようほどの美しい死といわれているようです。古来、偉人聖者の多くが肉体のひどい苦痛を甘受し、むしろ楽しみつつ、我が人生への満ち足りた感謝の喜びと共に、他者への限りない愛と、大いなる希望に燃えて死出の旅路についています。との言葉に、すでに生死を超越し、明朗闊達の境地に常住した先人たちのいのちの炎の輝きに感動いたしますね。

 私事で恐縮ですが、5人の身内の死の伴走を体験しました。今、思うとその貴重な何事にも代えられない体験は、神様からの贈り物のであったとありがたく尊く感じています。
 貴重な死の伴走をさせて頂いた人生の巡り合わせに、今思うとよくぞ私を選でくれましたと、今でも神様に、その巡り合わせに只々感謝の気持ちで一杯です。
 よく言われていることですが、死を迎える最期のあり方を自分事として捉えていることが大事だとも実感することができました。人工栄養の程度や・心停止・呼吸停止・脳死等に至った時の延命措置・耐え難い苦痛に対する緩和ケアの程度の選択等。そして、死後も家族を始め大切なお仲間たちとの人々の中で、生き続けていくという死生観の確立を再確認する日々です。

 そして、今生きている老後時間を現在進行形という形で生きていこうと暮らしています。過去に生きる時間や悔いの時間や華やかな思い出の中にだけ、存在するのでなく、「今、今を大事に精一杯生きて」いこうと思っています。これからも現在進行形のINGの気持ちを大切に、丁寧に毎日を過ごしていきたいと思っています。

 中秋の名月、十五夜のお供えや飾りにも意味があるそうです。団子はお月さま、ススキは稲穂でありお米を見立てていて、収穫した里芋を供える地域では芋名月と呼ぶそうです。お月見にはうさぎも重要な役割を担っていますが、長い耳はすぐれた聴覚を持ち、高く飛び上がり、うさぎの尾は「幸せ」を集める意味があるそうです。

 うさぎたちと共に十五夜を楽しみに秋の夜長、久しぶりに夜空を見上げてみようと思います。時には浮世のことからしばし離れ、皆様も大きく動く季節のゆくえを愛でながら
 お月見を楽しんでみてはいかがでしょうか。

Photo by 玉井八平氏(玉井公子副理事長父)