第22回くらしフェスタ立川学習会・NPO法人ブーゲンビリア第90回学習会

~かしこい医療消費者パート2~「地域医療における患者参画 乳がん編」

 2024年2月18日(日)、アイム第三学習室において、東京西徳洲会病院院長である佐藤一彦医師をお招きし、学習会が開催されました。第一部では、佐藤医師による講義があり、第二部では、内田絵子(統括理事長)の講義の後、佐藤医師、患者スタッフとの座談会となりました。

第一部:地域医療における患者参画を乳がんの治療を例にとり学ぶ

  1. 地域医療における患者参画の現状
     一都三県の患者流出入のグラフが示され、立川市、昭島市(東京西徳洲会病院所在地)でも、市内で治療が完結することが難しいとの指摘がありました。乳がんの場合、治療期間が5年、10年、15年と長いことも関係しているとのこと。
  2. 最近の乳がん医療
    ●抗がん剤を使うかは、「再発リスク×治療効果」を含め考えることが大切である。遺伝子検査(オンコタイプDx)を受けられるようになり変化してきているからだ。
    ●「ハーツ陽性」も薬の開発が進んでいる。「トリプルネガティブ」も抗がん剤治療が中心となり、7~8種類に分類することができるようになってきた。
    ●抗がん剤治療は投与スケジュールの遵守が重要なので、白血球を高める療法(点滴)を合わせてやっていく方向性となってきている。
    ●抗体薬物複合体や免疫療法(免疫チェックポイント阻害薬)
    ●温存手術は日米の違いがあり、切除する範囲が違う。傷口が目立たない手術、最小限の切除を目指す。
    ●リンパ節郭清をしないで、放射線照射の治療をする方法も出てきている。
    ●放射線療法は、電磁波、電離放射線治療のことだが、今までは25回の照射であったが16回と回数が減り、部分照射ができるようになってきた。
    等の説明がありました。やはり、治療法は進歩し続けています。
  3. 患者参画の医療の現実
     江戸時代は、「薬礼」(医師の診察を受けて薬を処方してもらった患者が医師に師に払う礼銭のこと)と言うのがあり、単に薬代とも言えますが、今日の診療報酬にあたります。
     北多摩西部医療圏(立川市、昭島市、国分寺市、国立市、東大和市、武蔵村山市)の患者流出入のグラフを再度みると、立川市、昭島市の流入は患者の3割程度にとどまり、7割が他の地域の病院、都心の病院に流出しています。大きな理由は、都心の病院には「治験」があるからではないでしょうか。
     「かしこい医療の選択」とは強制医療から納得医療へ、そして今は理解医療となっています。地域で安心して治療が受けられるよう努力していきます。と力強い言葉を頂きました。 講義の後、参加者から質疑応答があり、佐藤医師は丁寧に答えて下さいました。

第二部:地域医療における患者参画とは

  1. 患者主体の医療の実現には~患者参画・その必要性
    ●「患者参加」と「患者参画」(PPI)とは意味が違う。「患者参画」は患者、市民、医師もみんなで一緒に実施すること。患者の声を活かした医療品開発。医学研究、臨床試験に患者の視点を取り入れることである。
    ●治療法の選択は医師と患者の協同作業である。共同意思決定(SDM)「わたしのことは、私抜きで決めないで」の治療が、医療の質の向上につながる。
    ●「医療は人類の共有財産」である。医療政策、診察ガイドライン、医学研究、倫理審査、医療機関運営にも患者、市民も関わっていくことが大切である。
  2. 講師・患者・市民による座談会
    ●「わたしのことは、私抜きで決めないで」という言葉は、2006年国連で採択された「障害者権利条約」に出てきた言葉。がん患者だけではなく、認知症、若年性アルツハイマー病の患者にも共有している。治療に関しては、医師や医療者との協働作業ですが、生活は自分や家族、患者仲間との協働作業ではないか。(津根)
    ●令和5年3月に閣議決定した第4期がん対策推進基本計画に患者・市民参画の推進・取り組むべき施策に参画する患者・市民の啓発・育成と明記しています。Ji4pe医療開発基盤研究所の学習コース・日本癌治療学会学術集会のPALプログラム・日本臨床腫瘍学会のPAPプログラム・日本癌学会のSSPプログラムでは、患者・市民が参画するための学ぶプログラムがあります。興味を持った方は、是非参加してほしいです。(谷合)
    ●今後の徳洲会病院は、ロボット手術や婦人科がんの治療にも力を入れる方針があり、遺伝性乳がん・卵巣がんの専門医も増やし、「ウィメンズ・オンコロジー」女性に優しい病院を作っていく予定である。(佐藤医師)
    ●患者は納税者であり、保険料を払っている。自分たちが社会保障制度を支えている、次世代へ良い医療を繋げていく視点を忘れてはいけない。(内田)

NPO法人ブーゲンビリアの活動方針は、医療向上のために患者を支援し、患者参画型の医療を目指したアドボカシー活動*を行っています。政策提言活動・署名活動・情報発信など、活動は多岐にわたります。
●医療の改善進歩のために行われる事業へ、患者の安全性の担保
●倫理的な問題などについて、患者の視点からの意見発信。
●行政と患者サイドとの橋渡し活動。行政への署名活動。医療サイドへの提言活動。
●医療向上を目的とした様々なアンケート調査
を活動の柱としており、活動が認められたこと、認められる時代がきたと実感しました。

*アドボカシー:「擁護」や「支持」「唱道」という意味を持つ英語(advocacy)
ここでは、「患者アドボカシー」活動として、「制度・政策の変革により課題解決をする活動(政策変革活動)」の意味で使用している。(患者アドボカシーカレッジのサイトより引用)