絵子の縁側便り 8月号
2021年8月4日
内田絵子
暑中お見舞い申し上げます。会員の皆さまにはお変わりございませんでしょうか。
金魚は夏の風物詩のひとつ、夏祭りの金魚すくいに夢中になったあの日「金魚は幸せを呼ぶおめでたい魚で、玄関先で飼うと金運が高まる」と、母が大きめの金魚鉢で金魚を大事にかっていた夏の日。蚊帳の中に蛍を放した夜の光景、むせかえるような夏草の匂いと共に懐かしい真夏の子ども時代の暮らしの情景を時おり懐かしく・・・思い出すことがあります。
真夏の太陽に向かってさくひまわりの絵、八月のこの時季になると、オランダの画家、フィンセント・ファン・ゴッホの「ひまわり」をみなさん思い出されるのではないでしょうか。私は、本物のひまわりの花よりゴッホの描くひまわりの7作品が大好きです。
プロテスタンの牧師の子として生まれ、画商勤め、牧師、伝道師などを経て1881年、27歳で画家として生きる決意をして修行を始め、画家としての活動期間は10年と短いですが、作品の説得力はすごいものだと感じます。暗い感じのバーグ時代からパリへ出た後の鮮やかな色彩豊かな過程は狂気にさいなまれた激情の画家ゴッホの人生そのものかもしれませんね。
1888年、34歳のゴッホはパリから南仏アルルに移り、敬愛する画家のゴーギャンを自分のアトリエに迎えました。南仏の太陽・ユートピアの象徴・理想郷を象徴する黄色い花・15本のひまわり・・・・・。15という数は、ゴッホがアルルに呼びたかった弟や画家たちの人数とか、共同のアトリエという理想郷を作る夢を持っていたといわれていますが・・・・ゴッホが、神経発作や自身に対する失意、アブサンに溺れた日々や自身の耳を切り落とす事件を起こし、意見の食い違いでゴーギャンとの協働生活は破綻し、共同アトリエの夢も潰えてしまったという話に胸が締め付けられます。
理想郷を夢見たゴッホが生き生きと輝いていた時期の作品、ひまわり7点のうち3番目、4番目に描かれた作品は、念願のゴーギャンとの共同アトリエを夢見た華やぐ作品であり完成度が高いといわれていますが・・・みなさんはどのひまわりが好きでしょうか。(損保ジャパン日本興亜美術館所蔵・他)
4歳下の弟テオと交わされた手紙からあふれる情熱や人間味あふれるゴッホに魅了された隠れフアンの一人ですが、テオとの手紙に「黄金を溶かすには十分な加熱が必要だ。この花の色調は誰でも出せるというものではなく、一人の人間の全力を傾けたエネルギーと注意力が必要だ」作品だけではなく、手紙からも読み取れるような情熱や苦悩からあふれる出る人間味が魅力的だと世界中のフアンから未だに深く愛されている結えんといえるのでしょうか。
南仏の太陽・ユートピアの象徴・理想郷を象徴する黄色い花。・・・ひとづきあいが得意ではない、どこか切ないゴッホの描いたひまわりの黄色い色・・・、衰えの見えるひまわりを描くことで逆に生き生きと魅力的に描かれ、黄色の花瓶に活けられた15本のひまわり花の一本一本が生命力に溢れ、何かを・・・・・語りかけてくる夏の夜ですね。
フィンセント・ファン・ゴッホ 1888年8月 ノイエ・ピナコテーク(ミュンヘン)所蔵
12本のひまわり。3番目の作品とされる。
フィンセント・ファン・ゴッホ 1888年8月 ナショナル・ギャラリー(ロンドン)所蔵
ファン・ゴッホ自身が気に入った「12本のひまわり」(ミュンヘン作品)をもとに制作した4番目の作品とされる。15本のひまわり。