絵子の縁側便り 9月号

2026年9月
谷合 公子

 9月が始まりました。朝夕には秋の気配も感じられますが、日中はまだ暑さが続いています。皆さんはいかがお過ごしでしょうか。

 さて、今更ですがNPO法人ブーゲンビリア(以下ブーゲンビリア)は「学び」「癒し」「アドボカシー活動 協働と連帯」「国際ボランティア」「研究支援」の5つの柱をたてて活動しています。その中でも「アドボカシー活動 協働と連帯」を掲げているがんの患者会は多くはないと私は思っています。がん患者のアドボカシー活動とは、がん患者や家族の声を社会や制度に反映させるための「政策提言・啓発活動」です。2006年6月に「がん対策基本法」が成立。この法律の成立を強力に後押しした患者会の1つがブーゲンビリアであり当会統轄理事長の内田絵子さん(以下絵子さん)だと関西の某患者団体の代表者からお聞きしたのは15年ほど前です。昨日のことのように思い出されます。

 そんな絵子さんの率いる会ゆえに最近のアドボカシー活動では「立川市がん条例」施行に大きく関わることができたと思います。「立川市がん条例 逐条解説」の1ページには、“条例制定のきっかけとなったのは、がんを経験した市民やその家族と共に、がん患者支援やがん対策の活動を行っている市民団体から、市議会に市としてがん条例を制定してほしいという請願が出され、全会一致で採択したことによります。”とあります。この市民団体はブーゲンビリアであり絵子さんの強力な活動があったと私は思っています。

 7月12日に開催した”ブーゲンビリア設立30周年記念・立川市「がん条例」制定記念シンポジウム”では活発な討論が行われ「がんになっても自分らしく生きることができる社会の実現」に近づいてきている気がして胸が熱くなりました。国に「がん対策基本法」、東京都に「東京都がん対策推進計画」があり、さらには地域に根差した「立川市がん条例」ができたことで、きめ細かな政策の好事例を作って近隣の地域に広がることを期待するばかりです。

 さらに嬉しかったのは会場にブーゲンビリアのホームページの運営を担当していただいている渡辺葉子さんがお忙しいところ初めて駆けつけてくださったことです。渡辺葉子さんはご友人のエンジニアSさんと共に、今のホームページの立ち上げから現在もなお大変お世話になっています。その渡辺葉子さんとのご縁を作ってくれたのが副理事長の1人だったNさんです。当時は玉井公子さんを筆頭に5人の副理事長がいました。

 Nさんの多くの活動で忘れられないことが少なくとも3つあります。1つ目は、2017年のホームページのリニューアルです。Nさんは、地域活動助成をしている団体に応募し書類審査・面接を経て助成金を獲得しました。ホームページに掲載する内容を決定する作業は膨大な時間がかかりましたが、それまでPCのみ対応の画面がスマホやタブレット端末でも使いやすくなりました。写真や活動報告なども随時アップできる今の形ができました。

 2つ目は、2018年9月2日に開催されたシンポジウム「よく死ぬことはよく生きることパートⅪ」の特別講演に哲学者であり当時岩手保健医療大学学長の清水哲郎氏をお招きするのに絵子さんと共に尽力されたことです。

 3つ目は、アドボケイト活動のたくさんの抄録作成です。彼女の作った抄録の1つが2015年第53回日本がん治療学会学術集会のペイシェント・アドボケイト・リーダーシッププログラム(以下PAL)に採択され、Nさんと共にブーゲンビリアの一員として私も、会に参加することができました。内容は「乳がんホルモン療法 服薬アドヒアランス」の患者QOLに関する調査実施についてでした。採択の背景にはブーゲンビリアの活動実績と絵子さんの後押しがあったことは言うまでもありません。私達は活動を一人でも多くの人に知ってもらいたい、PALプログラムで学んでブーゲンビリアに持ち帰りたい一心でした。その時にNさんが話してくれたのが次の言葉でした。

 「がん患者となり、治療のために望むと望まないにかかわらず真正面に“がん”と向き合わなければならなくなった。やはり、専門性が高い分野だけに独学は困難。まだアドボカシー活動の日が浅く、明確な展望を立てられるまでには至っていないが、学ぶ機会と交流する機会から自分の活動の方向性をつかめるのではないかと考えている。患者向けの分かりやすいがん学習の場ももちろん必要だが、容赦ない専門的知識を専門家から学ぶこの機会をぜひ与えてほしいと思う。精一杯理解する努力をしたい。」

 大変残念で悲しいことですが数年前にNさんは天に召されました。とても聡明で優しく食いしん坊で誰からも好かれる女性でした。彼女の意思を少しでも継いでいきたいと思います。

 9月は暑かった夏の疲れが出やすい時期です。くれぐれも無理なさらず、どうぞご自愛ください。2026年の中秋の名月は、9月25日です。爽やかな過ごしやすい秋本番まであと一歩です。

Photo by 玉井八平氏(玉井公子副理事長父) 東京都薬用植物園にて