絵子の縁側便り 4月号

2026年4月
玉井 公子

 ついこの前お正月を迎えたような気がするのに、桜の花が咲き色とりどりのチューリップが日差しを受けて揺れる季節になりました。
 京都や奈良には花鎮目(はなしずめ、花鎮祭)といって、桜の花が散るころに疫病が流行るといってお祭りをする神社があります。現代ではこの時期どちらかというと花粉を鎮めてくれと思いますが。

 花好きだった父の誕生日は4月1日でした。来年だと思っていた入学の案内が来て、早生まれって3月31日までじゃ無かったの? と家族一同びっくりしたそうです。ずいぶんと悪ガキだったそうですが、戦後満洲から帰ってきてからは、好きな植物の仕事に就き花に囲まれて暮らしていました。
 80歳直前から東京で私と一緒にマンション暮らしを始めたのですが、ベランダしかない環境では満足できなかったのか、春になると待ってましたとあちこちに花を見に出かけて行きました。昭和記念公園、根川の緑道、薬用植物園、多摩川や玉川上水etc. 仕事の専門が熱帯植物だったこともあり、東南アジアやマダガスカルにも一緒に行き植物三昧の旅を楽しみました。その頃に撮りためた写真は縁側だよりに毎号使っていただいています。

 そんな父の70歳の誕生日に母が亡くなりました。エイプリルフールの冗談ではありません。この日に亡くなったら絶対忘れないだろうと狙ったのか、愛ゆえか、ただの偶然か。そのため4月の1日前後には京都に行き、お墓参りとお誕生日会をするのが恒例になっていました。そう、ブーゲンのお花見には絶対行けないスケジュールです。
 4月の京都は華やかです。丸山公園や嵐山のような桜の名所でなくても、そこここにある小さなお寺の塀越しにも桜の木があったり、木蓮の花が見えたりします。小さな小路に入ると古い町屋が現役で残っています。ああ、京都は空襲で焼けなかったのだと、連日戦火のニュースを見る今、しみじみと思います。少し歩くと石碑や案内板があり、どこもかしこも歴史的な場所であることが面白く、聖地巡りではありませんがガイドブックにも小さくしか載っていないようなスポットを探してみたりします。暑い暑い夏の前に京都を楽しむのには良い季節です。昨年からインバウンドのお客さんも少し減っていますので、今年はチャンスかもしれません。お祭りかと思うほどの観光客はちょっと興ざめですから。

 旬のものをいただくのも楽しみの一つです。桜鯛や早採りの筍、木の芽の香りが食欲をそそります。ピンクに染めた百合根の花びらがかわいらしい。桜餅は道明寺やないとな、なんて言うから京都人は敬遠されるんやと思いつつ、美味しくいただいています。

 こう書くと私は京都人だと思われそうですが、実は京都に住んだことはありません。京都人と名乗ると経歴詐称になります。生まれ育ちは京都の隣、大阪府高槻市で、京都にも大阪にも電車に乗れば20分から30分で行ける便利な衛星都市です。父の実家が京都にあるので大阪より京都に行くことが多かったのですが、夏は暑いし冬は寒いし京都ルールは厳しいし、住みたいと思ったことはありませんでした。
 このところ所用で京都に行くことが増え、数日泊まることも増えてちょっと京都の暮らしも悪くないかもと思う自分がいます。でも、きっと仕事が好きすぎて帰ることは無いんでしょうね。

 春は気温の乱高下が有り、自律神経の乱れから不調になる方も多いようです。花粉症のせいだと決めつけないで、生活を整えるなど心と体を休めてみてはいかがでしょうか? 道端のお花も心を癒してくれますよ。

Photo by 玉井八平氏(玉井公子副理事長父) 昭和記念公園にて