絵子の縁側便り 11月号

2025年11月
谷合 公子

 11月が始まりました。10月の初め頃まで半袖で過ごせるぐらい暑さが続いてぼんやりしていたところ、10月6、8日と立て続けに日本人のノーベル賞受賞のニュースが飛び込んできて目が覚めました。お二人とも医療にも結び付く研究と聞き、その応用への期待に胸が高まるばかりです。

 プロ野球パ・リーグの埼玉西武ライオンズのファンクラブ会員だと友人に話したら、「推し活は健康に良いのだよ」と言われました。「あなたの推し活は何?」「私の推しの〇△×」などと「推し活」という言葉をよく耳にします。確かに西武ライオンズが試合に勝った負けたで一喜一憂して、選手が活躍すれば嬉しいし怪我をしたら心配します。日常生活には無い気持ちを味わっています。その西武ライオンズは残念ながら6チーム中5位の成績でシーズンが終了しました。優勝したのは福岡ソフトバンクホークス。9月27日の西武ライオンズとの試合で勝ち優勝を決定しました。

 翌28日の読売新聞の朝刊には1面に「ソフトバンク連覇 パ・リーグ」という見出しの記事が出ましたが、社会面には「不屈の大関 タカV貢献」「がん乗り越え 初の2桁勝利」の見出しで大関友久投手の記事がありました。以下にその記事を引用します。

 一軍で登板を重ねていた2022年7月末、患部にしこりを感じた。インターネットで調べ、がんを疑った。看護師の母に相談し、病院で検査を受けた。「死に対する近さを感じ、恐怖を覚えた」。医師に告げられたのは、早期の精巣がん。腫瘍の摘出手術を受けた。

 茨城県出身。22年は開幕ローテーション入りし、7月の球宴に初出場。順風だった野球人生が一変するような突然の病魔だった。幸い大きな体力の低下はなく、リハビリを経て、手術から約2か月後の9月25日に一軍で復帰登板した。

 (中略)現在も半年に1度、定期検診を受ける。試合ではうまくいくこともいかないこともあるが、「今が幸せと思うことが増えた」という。(以下略)

 2人に1人ががんになると言われていますが、ブーゲンビリアの活動に参加する時を別として、自分1人ががんのサバイバーだと心細くなる日も少なくありません。が、大関友久投手が体験をカミングアウトして活躍している記事を目にしてとても心強く、たくさんの希望をもらいました。

 2025年のノーベル賞を受賞した坂口志文氏と北川進氏の大切にしている言葉は共に「運鈍根」だとニュースで聞きました。「鈍と根で運がついてくる」。運は、幸運に恵まれること。鈍は、周りに流されない鈍感さがあること。根は、根気強く続けることだそうです。何十年も研究された方達がおっしゃるのですから私には想像を絶する「運鈍根」です。

 10年以上前にブーゲンビリアの学習会で乳がんの治療薬のトラスツズマブ(商品名:ハーセプチン)の誕生の実話を基にした映画「希望のちから」を観ました。薬ができるまでに治験の被験者が命を落とすなど、さまざまな課題や困難が描かれていました。観終わった後、参加者全員から拍手が起こりました。自分の経験を重ね合わせて「私はこの薬で救われた」「感謝」の声をたくさん聞きました。研究から患者が手にできるお薬になるのは並大抵なことではないはずです。が、坂口志文氏と北川進氏のご研究で救われる人がいることを想像すると希望が湧いてきます

 残暑が長引いたせいで秋が来たと思ったら、一気に寒くなりました。季節の変わり目です。どうぞお体に気をつけてください

Photo by 玉井八平氏(玉井公子副理事長父)