絵子の縁側便り 7月号
2024年7月
津根 静香
今や、「漫画」は日本文化を代表するひとつとなり、社会的価値観を上げています。漫画で取り上げられた場所を「聖地」と呼び、「聖地巡礼」の名の下、日本人のみならず、外国人をも虜にしています。観光業界に大きな影響を与え、その地域の産業にも…。スマホ等で読む人も増えているようですが、漫画は、紙を媒体とする書物として読む世代の私。紙をめくる感触が快感なので、まだまだ本屋に足を運ぶでしょう。人気が出るとアニメ化、映画化する傾向にありますが、一方的なイメージを与えられる前に、登場人物の声や景色・風景などを、自分の想像力で好きなように、思い膨らませるというのが、最大の魅力なのだと感じています。
治療中、私が大人買いし、一気に読んだ漫画を紹介したいと思います。とは言っても、気持ちが上がるものばかりではありません。しかし、今でも心に深く残るものばかりです。
身体がだるく、だらだらと過ごすしかない時期に、妹が薦めてくれたのが、「宇宙兄弟」小山宙哉著です。当時22巻まで出ていました。今は43巻、継続中。現実と違う世界へ壮大な時間と空間に誘われ、気持ちが楽になったのを覚えています。「すごく良かったよ」と友人に話をしたところ、ギンギンに輝く表紙の「宇宙兄弟~心のノート~」(モーニング編集)の単行本が送られてきました。「宇宙の話をしよう」「It’s a piece of cake」とカバーに大きくあります。
迷った時は「どっちが正しいが」なんて考えちゃダメよ
日が暮れちゃうわ
「どっちが楽しいか」で決めなさい 金子 シャロンのことば
何もせず止まっているのは、道端の石コロです
動いて、動いて、輝く石は、流れ星…
「生きた石コロ」です 新田 零次のことば
次に、認知症の父を介護していた時に出会った漫画が「ヘルプマン」くさか里樹著です。2004年に発行され、日本の老人介護を題材に高齢社会の問題点を描いた漫画です。介護保険制度で、福祉分野との関わりが大きくなりました。27巻が終わり、編集社が変わった「ヘルプマン!!」では更に、医療分野との関わりの問題も取り上げられ、父の状態とも重なり「まさしくそうなんだよ」と心の中で叫んだり、涙したりして読みました。人間の尊厳は永遠のテーマです。
そして、テレビ番組で知ったのは「義男の空」田中宏明著です。書店に置いていなかったので、全12巻を注文して読みました。北海道に実在する小児脳神経外科医と、その仲間の物語。医師の幼少期から、外科医になるまでの終戦後の暮らしにノスタルジーを感じました。そして何より描写している子どもとその家族は、実在しています。子どもの命を通して、親の気持ちの悔しさ、もどかしさに心通ずることもあり、ページを閉じたり、ページを戻したりと、じっくり自分と向き合う漫画でした。高橋義男医師の活躍は医療界に留まらず、きっと今もいろいろな分野で活動されていることでしょう。
最後に、「ヤマノススメ」しろ著です。今までの私の「縁側便り」を読んで頂いている方からは「そうきましたか!」と言っている声が聞こえてきます。現在は23巻。女子高生による登山をテーマにしたストーリーです。「聖地巡礼」と言うのか、主人公が住んでいるのが飯能市で、彼女が散歩コースのように歩いている多峯主山&天覧山へは、心ワクワク、ウキウキ感をもって山行に参加しました。作者は実際に登山しているようで、そのルートや風景が描写されており実用的な面もあります。カラーではない部分は空想で楽しみます。
次に出会う漫画は何だろう…。気のみ気のまま、その時の自分に合わせて巡り合う気がしています。最近は、障害者や高齢者を対象とした漫画が多く見られるようになりました。がん患者や難病の方の関係の漫画もあると、多くの方に知ってもらう方法の1つとして良いのではと思っています。
例年より梅雨入りがかなり遅くなった今年は、日々の気温差が大きく体調管理が難しいですね。これから迎える夏も気温が高い日が続きそうです。街には、暑さをしのぐスポットがあるようなので、そこへ漫画を持ち込み、リラックスタイムの1つとして過ごしてみるのはいかがでしょうか。
写真:副理事長玉井公子父 ・玉井 八平