絵子の縁側便り 7月号

2021年7月1日
内田絵子

色とりどりの朝顔に夏の訪れを感じる季節になりました。七夕・ラジオ体操・盆踊り・蝉の声・蚊帳・蛍・海水浴・花火大会・お盆行事・夏祭り・行水・風鈴・うちわ等の涼への演出や日本の夏の習わしや行事の数々。晴れの日も雨の日も風の日も、草も土も花もみんな友だちと、真っ黒になって遊んだ楽しかった幸せな夏休みの日々の光景が思い出されます。会員の皆さんは、どんな夏休みの思い出をお持ちでしょうか。

 唐突ですが、一節によれば人類は大きくは狩猟民族と農耕民族に分かれると言われますが、皆さまはどちらが強いタイプでしょうか。一か所に定住し、作物を育てるために耕作用の道具や保管用倉庫を作り、河川の増水や収穫時期を知り、計画的に作物を育てる典型的な農耕民族は日本人気質といえるでしょう。農耕民族は日本、東南アジア、古代エジプト、メソポタミヤ、ペルシャ、スペインなどの地域を指すのでしょうか。ギリシャやスペイン、東南アジアを旅すると何だか懐かしさを感じるのは農耕民族の一体感からかもしれませんね。

 縄文時代には自然の恵みに囲まれイノシシやうさぎを狩り、魚を取り、栗やドングリ等を集める狩猟と採集の生活をしていたとか。そして3000年前の弥生時代に農耕民族は日本に根づいたといわれていますが、狩猟と農耕の両方の能力を持ちあわせている日本人のルーツ、何だかとても力強くて誇らしいですね。日本人のDNAにはコツコツ積み上げる農耕民族と、やるときはとことんやる積極的な狩猟民族の両方を備えながら進化し現代に至っている民族なのだと感動します。遊牧民は、気候の変化や家畜の状況に合わせて、夏営地、冬営地にと移動して生活を守っています。また、狩猟採集であり魚介類、貝類や海草を捕獲、収穫する狩猟採集民などは、北極圏から砂漠に至るまで地球上全ての地域に存在していたのですね。

どの時代でも、どの民族でも常に進化しながら生き抜き、長い時間をかけていのちを繋いでいく、見えない繋がりが感慨深く感謝の思いで胸が一杯になります。父と母で2人、父と母の両親で4人、そのまた両親で8人、十代前になると1024人、二十代前は百万人を超すとか。私たちはそんな大事な命も死も受けついでいるのですね。ですからどんな時でもありのままの事実を受け入れ、災難も病も自然のありようと受け入れ、「自分の持ち分のいのち」をこころ豊かに生き抜いてみたいですね。随分前のことですが作家の曽野綾子さんが、新聞のコラムで「人生とは悲しみこそが基本の感情であり、そこから出発する人には芳香が漂うのを知った」と書かれていた一文に目が釘付けになりその通りと、ひとり頷いたことがありました。芳香が漂うとは・・「病や苦難の渦中にあってもそれを不足にも思わず、感謝できる人、受け入れることが出来る人」なかなか難しいことですが、それは辛い経験を通して魂が鍛えられるからかもしれませんね。「人生のどんな経験にも、無駄がない、苦労したのは私の財産」と母の言葉の重さをかみしめる年になりました。

こころ豊かに生きる知恵や人の悲しみ知った芳香が漂う人になりたいものですね。