絵子の縁側便り 4月号

2021年4月1日
内田絵子

 暖かな陽をあびて、山全体に霞がかかったように咲きほころび春爛漫を演出する山桜、河川の堤防や城跡、公園の桜並木、桜のトンネル、桜吹雪に葉桜・・・その美しい風景に酔いしれた日々を過ごしています。華やかな春風に誘われて、我が家の狭い庭に手作りの小さな、小さな花壇を作りしました。花のことを「花笑み・はなえみ」といいますが、花のように笑うという意味でも使われていますよね。次々と花が咲いて、自然と笑みがこぼれる春・・・・・笑顔がいっぱいあふれる季節ですね。
 会員のみなさんは、どのような春を過ごされていますでしょうか。

 春の芽生えと共に、ロサンゼルス在住の旧友から花の絵柄の美しいカードが届きました。思えばここ数年会っていないなあ・・・。春を共有し、心の距離を近づけ、支えあいたいのではと直感、何があったのかしら。なぜなら、人生は多難であり、苦しみの種は尽きないといいますから・・・ドキドキしながらカードを開きました。

 彼女との出会いは今から30数年も昔の話しで、1984年夫の赴任に伴い家族4人でロスアンゼルスに渡米した時のことです。二度と戻ることはない瑞々しい時間、若かったあの日の時間、ロサンゼルスで過ごした3年間の時間は、今でも私たち一家のかけがいのない宝物です。帰国を想定しながらの逆算の暮らしは、出会いと別れの連続の充実した日々でした。息子たちは、LAの現地の公立小学校・幼稚園へ登校しておりました。私もボランティアとしてお手伝いをしていると教室では、「みんなちがっていてもいい、みんないい」の教育姿勢を目指していることに感激しました。また、戦争を乗り越え、子どもたちが机を並べ共に学ぶ姿に感動。日本の子どもたちが現地の学校で受けいれられ、健やかに学ぶ機会を与えられていることへの感謝。これからも仲良くの感謝の気持ちから、一念発起して手作りの日米の文化交流「能と狂言を楽しむ会」を立ち上げました。地域のネットワークに強いLA在住の彼女の助けもあり、多くの方々とのつながりを持つことができ、感謝の日米交流の思いを果たすことができました。彼女の支えがあったお陰です。充実した活動時間を持てたことは大きな喜びであり、私自身の成長にもつながったと感じている懐かしい思い出です。

海を越えて、35年もの友情が続づいたのは、彼女の優しさと聡明さの賜物です。
改めて人の世のえにしの深さに、ありがたい感謝の気持ちで一杯になります。

 コロナが落ち着いたらLAを訪ね、お互いに若く張りきっていたあの頃、磨いた赤リンゴのようにピカピカと共に生きた時代の・・・・・思い出を語り合いたいと思っています。
 昨年、88歳で亡くなられたデーケン教授の「よく生き よく笑い よき死と出会う」のご著書の中で、日本語の言葉で「出会い」という言葉がとても好きですと、書かれています。

出会いによって人間は成長する。出会う相手が偉大なる人格者であればあるほど、その出会いも深いものになるのです。そして旅には、出会いの他にもう一つの大切な体験があります。それは転機、つまりターニングポイントです。
 「人間は、人生の旅で体験した出会いと、選択した転機によって大きく形作られていくのです」
の教授のご著書の言葉の数々を思い出しては、かみしめています。

 思えば、人生には親や兄弟、姉妹、配偶者、師弟関係をはじめとする数多くの人々との出会いかあります。また、病や仲間との出会い、仕事や芸術との出会い、文化や時代との出会い、自然や宇宙との出会い等、様々な出会いがありますが、生きることそのものが、出会いの連続ですものね・・・・。出会いの対語である別れも、一面では新しい出会いの始まりと、良く言われていますが「死から生を見つめる。別れから出会いを考える。」このような発想は日本文化の根底にある特色の一つといわれていますが、きっと、対極から見つめると本質がハッキリするからかもしれませんね。

まさに、人間のあらゆる出会いの原点は、「愛し合い、支えあい、助け合う」ことではないでしょうか。そのために、人は出会うような気がしてなりません。なぜならば、そういう関係に発展しない出会いは、ただすれ違って消えていってしまいます。

 大きな変化や変動が、益々待ち受けているこれからの社会、激動の時代でも人は、なぜ人と出会うのでしょうか。その答えは、たぶんたくましく生き抜かれた先達に学び、自身の身近に人生の達人が、存在していることを知るためではないでしょうか。
 そういう達人が、自身の身の回りにいらっしゃるのだと思うだけで、勇気が与えられ、心強く感じ、安心感で満たされてくるような気がします。それは、もしかしたら自身のご先祖さんであり、祖父母であり、両親であるのかもしれませんね。
精神的にも厳しいことが続く日々、これからも見えない存在や人とのつながりを大切にしたいと感じています。もしかしたら、その自覚が人生を豊かにするのかも知れませんね。

大切な人と身近な春を共有し、励ましとなる「花笑み」が、みなさんに届くといいなと念じています。「菜の花」の花言葉は「小さな幸せ」とか。会員皆さんの日々に、たくさんよいことがありますように願っています。

 菜の花の花言葉は「小さな幸せ」今日もたくさんのよいことがありますように