ブーゲンビリア第119号(通巻186号)2014年11月号より

 晩秋の静けさの中、紅葉も色づき始め深い朱の色にそまった柿木がある風景になぜだか懐かしさを覚えます。やわらかな日差しが軒先につるされた渋柿を愛おしそうに輝かせる光景・・・・・四季にめぐまれた日本に生まれた幸せを満喫しています。

 食欲の秋・実りの秋・読書の秋・芸術の秋・スポーツの秋・哲学の秋・豊穣の秋と様々な秋に出会いますが皆さんはどんな秋を堪能されていらっしゃいますか。

 晩秋の昼下がりには厚い書籍の読破にチャレンジをしたり古書の匂いを求めて、にわか読書家に変身します。秋到来ですので哲学チックに秋の定番書の世阿弥「風姿花伝」の「時分の花」のページをめくってみることにしました。

 LA滞在中、母親たちと子どものための日米の文化交流を目指して「能と狂言を楽しむ会」を立ち上げました。幼い時から本物を体験しようと「子どもの能楽教室」を開催されていた南部美峯さんとの出会いから誕生した会でした。あれから何十年もの月日が過ぎ去り、今ではその幽玄な世界も様式美も、装束も能面にも触れる機会も少なりましたが・・・・・南部美峯さんが亡くなられてから「風姿花伝」書は、私にとって時折ひらく大事な一冊となりました。

 世阿弥の能楽の聖典とされる600年以上前の「風姿花伝」の中の一節「時分の花」です。

  「時分の花をまことの花と知る心が真実の花になほ遠ざかる心なりけり」
    世阿弥

 「時分の花とは、その時代その時々に精一杯咲かせた花は、若さゆえに放たれたもので一過性の成功の花であり、若さの衰退とともに必ずや無くなってしまうもの・・・。

 まことの花とは、その時代その時々、常に稽古と工夫によって初めて咲く花、不断の問いによって育まれるもので、一過性のものではなく長期にわたってその美しさを放ち続けるエネルギーを持つ花のことです。まことの花とは名人の佇まいのことと言われています」と、わかりやすく解説されています。

 風姿花伝書は芸術論を超えた人生論として600年以上も前の世阿弥のことばは、今も生きて多くの人々に名言の宝庫として語られています。

「風姿花伝の時分の花」のページの絵子流の感じ方としては、「まことの花」を咲かすのには、厳しい修行の積み重ねだけで量るだけではなく、その質や凝縮された濃度でも図れるのではないかと思います。人生の生きた時間や寿命の長短だけで決まるものではなく、ましてや長寿が人生の成功者、短命は敗北、損な生き方、などというものではなく、今、生かされていることを知り、精一杯、生ききることが「まことの花」を咲かすことができる人なのではないかと感じます。

 「まことの花とは何か・・・・まことの花を探求しつづけ咲かせるためには・・・・まことの花を咲かせることは人生における最大の幸福ではないか・・・・」との問いに答えを見出し続けることは大事なことだと思います。

 最近、歳のせいか一度目が覚めると寝付けない夜が増えました。そんな深夜には、羊を数えたり、雑誌をめくってみたり、明日の調理の下ごしらえをしたり、パソコンに向かったり、深夜テレビを観たりして、眠くなるまで過ごしています。

 また、眠れない夜は若さを補充したりします。普段考えないことを考えることはわかさの秘訣と言いますので、私は「地球の将来はどうなるのか」とか、「人類は、日本人は、私は何ができるのか、何をなすべきか」など等考えるのも秋の夜長の楽しみの一つです。

●TV スーパープレゼンより

 統計学者ニック・マークスのTV講演会「地球幸福度指数」調査についてのTVプレゼンを観ました。幸福度を測る指標のポイントは誰のhappyかという視点からの「the happy planet Index 」のタイトルの講演でした。印象に残ったところをご紹介します 。

 「これまで人類が改善すること・進歩することとして考えていたのは、もっぱら金融や経済面からでした。そして、それらに関する数字が増えることが、成長としてよい事だと思われていました。株価や国内総生産が増えることが社会の豊かさを増し、それが人々の暮らしをよくすると考えていました。」

 「1968年の当時大統領選に出馬していたR.Kennedyは、既にその当時国民総生産(GNP)という指標を批判していました。GNPでは人生の豊かさといった価値は測れないです。つまりGNPを良くしても人は幸せになれない」ということを大統領選で選挙演説をした画期的なことを紹介しながらこれから求められているのが「地球幸福度指数」です。

 「地球幸福度指数」とは、地球を消費しているという地球を幸福にしない国、地球の資源を大事にしている国、地球を幸福にする国」という考え方は、国民の幸せという大事なキーワードに焦点を当てる重要な視点です。

 ニック氏は、イギリスの民間シンクタンクを設立し、イギリス政府に対して環境を保全しつつ持続可能な発展をえるための政策提言を行っています。ニック氏のテーマは「幸せ」です。いかにして手元の資源・地球を使って効率よく幸せを得るかと言う指標です。

 「地球幸福度指数」には、国民の幸福度とその国民が属する社会の持続性として持続するために地球を消耗するエネルギーといった概念が盛り込まれていて、地球環境や地球に負担をかけずに人間の生き方、幸福感等の理想をきちんとイメージして「地球上のすべての人々が良い方向へ導かれるための物差しの一つとしての指標を持ち、幸せの連鎖を深めていきましょう。」というメッセージが盛り込まれていて納得のいく指標です。

 また、環境への負荷を表す指標と国民の平均寿命と幸福度(人生の長さと質)を掛け合わせたものが「地球幸福度指数」となります。幸福度・平均寿命・環境への負荷指数を表したグラフは、アメリカやヨーロッパ諸国、一部の湾岸諸国は、沢山の幸福を生み出しているが、そのために大量の資源を消費していることが一目瞭然でわかるグラフでした。また、グラフでは、少ない資源エネルギーで高い幸福を生み出している国のグループがラテンアメリカの国々だということも可視化された地球幸福度指数でした。

 その結果、世界中で一番幸せな国は中南米のコスタリカでした。コスタリカは151か国中の堂々第1位でした。またコスタリカは国策として、健康や教育に力を入れ、経済至上主義ではない社会の連帯感を大切にし、思いやりにあふれた国と言えるのでしょう。平均寿命が75.8歳とアメリカより長い寿命です。ちなみに日本は45位・アメリカは105位という結果でした。